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生前贈与が相続税の対象になるケースと注意点をわかりやすく解説

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生前贈与と聞くと、相続税対策として早めに財産を移しておく方法というイメージを持つ方が多いかもしれません。とくに会社経営者の方は、個人資産だけでなく自社株や事業用資産の承継も視野に入るため、贈与と相続の境目を正しく理解しておくことが重要です。ところが実務では、贈与したつもりでも相続税の対象に取り込まれたり、想定していた節税効果が得られなかったりするケースが少なくありません。

近年は相続開始前の贈与に関する扱いが見直され、従来の感覚のまま対策を進めると判断を誤るおそれがあります。とくに資金調達や事業承継を考える経営者にとっては、相続税負担が後から大きくなると、納税資金の確保や株式の維持に影響する可能性もあります。この記事では、生前贈与が相続税の対象になる代表的な場面を整理したうえで、実務上見落としやすい論点を経営目線で解説します。

生前贈与をしても相続税の対象になる仕組みを先に押さえる

生前贈与が相続税の対象になるのは、贈与そのものが無効だったからとは限りません。税法上は、被相続人が亡くなる前の一定期間に行われた贈与や、相続時に精算することを前提にした贈与について、相続財産に持ち戻して課税する仕組みがあります。つまり、民法上は贈与として成立していても、相続税の計算では別の扱いになることがあるという点が重要です。

この考え方の背景には、亡くなる直前に財産を移して相続税負担を大きく減らすことを防ぐ狙いがあります。経営者の場合、現預金だけでなく、役員貸付金、保有株式、賃貸不動産、保険契約の権利など多様な資産を持っているため、どこまでが相続税計算に戻されるのかを資産ごとに確認しておく必要があります。

相続開始前の一定期間に行った贈与は持ち戻しの対象になりうる

近年の大きな変更点として、相続開始前に行われた暦年課税の贈与について、相続税に加算される対象期間が延びています。税制改正により、従来は相続開始前3年以内の贈与が加算対象でしたが、2024年1月1日以後の贈与からは段階的に延長され、最終的には相続開始前7年以内の贈与が対象となる仕組みになりました。

この改正は、相続税法の見直しとして施行されており、現在の実務では経過措置も含めて理解する必要があります。具体的には、延長された4年分のすべてがそのまま加算されるわけではなく、一定額については加算対象から控除される仕組みがあります。そのため、単純に過去7年分を全額足し戻すと考えると計算を誤りやすくなります。

経営者が誤解しやすいポイント

事業承継対策では、毎年少しずつ株式や現金を移す方法がよく検討されます。しかし、相続開始前の時期によっては、その贈与が相続税の計算に組み込まれるため、思っていたほど課税価格が下がらないことがあります。とくに高齢期に入ってから対策を始めると、贈与の実行回数が多くても、結果として持ち戻しの影響を強く受けやすくなります。

また、贈与税を申告しているかどうかと、相続税で加算対象になるかどうかは別問題です。申告していたから相続税の対象外になるというわけではありません。税務上は、贈与として成立していることと、相続税計算で加算されることが併存します。

相続時精算課税を選んだ贈与は将来の相続税と強く結び付く

生前贈与が相続税の対象になるケースとして、相続時精算課税制度の利用は代表的です。この制度は、一定の要件のもとで贈与時の贈与税負担を抑えながら財産移転を進められる一方、その贈与財産を将来の相続時に相続財産へ加算して精算する仕組みです。したがって、制度の名称どおり、贈与で終わるのではなく相続まで見据えて考える必要があります。

2024年以後は相続時精算課税にも基礎控除的な仕組みが新設され、従来より使い勝手が見直されました。ただし、制度を選ぶと暦年課税へ自由に戻ることはできず、適用後の資産移転計画に継続的な影響が出ます。経営者にとっては、自社株の株価上昇が見込まれる局面で早めに移すという発想と相性がよい場面もありますが、納税資金や後継者の保有比率まで含めて設計しないと、期待した効果と異なる結果になりかねません。

自社株の贈与で考えておきたい点

非上場株式は評価が複雑で、会社の利益水準や純資産、類似業種比準など複数の要素が関わります。業績が伸びる前に贈与したつもりでも、制度選択や贈与時期によっては将来の相続税計算との関係が変わります。資金調達の予定がある会社では、増資や株主構成の変更が株価評価や支配権に影響することもあるため、税務だけでなく経営面との整合が欠かせません。

名義を変えただけでは贈与と認められにくいことがある

生前贈与が相続税の対象になる以前に、そもそも贈与として有効に成立していたかが問題になるケースもあります。よくあるのが預金の名義変更です。子や孫の名義の口座に資金を移していても、通帳や印鑑を贈与した側が管理し、受け取った側がその存在や内容を知らない場合には、実質的には被相続人の財産とみなされるおそれがあります。

これは一般に名義預金と呼ばれる論点で、相続税調査でも確認されやすい部分です。経営者は法人と個人のお金の管理が複雑になりやすく、家族名義口座への資金移動が生活費補助なのか、贈与なのか、単なる管理上の振替なのかが曖昧になりがちです。形式だけ整えても、受贈者が自由に管理処分できる状態にあったかどうかが重要になります。

実務で確認しておきたい事項

  • 贈与契約の内容を当事者双方が認識しているか
  • 通帳、印鑑、証券口座の管理権限が受贈者に移っているか
  • 贈与後の資金を受贈者が自分の判断で利用できるか
  • 毎年同じ時期、同じ金額で機械的に移していないか

とくに毎年一定額を長期間移す場合、はじめからまとまった金額を分割して贈与する約束だったとみなされると、各年ごとの暦年贈与ではなく定期贈与として扱われる可能性があります。そうなると、想定していた非課税枠の活用が認められにくくなることがあります。

死亡保険金や退職金と生前贈与の設計がぶつかることもある

会社経営者の相続では、個人資産だけでなく、死亡保険金や死亡退職金がまとまった金額になる場合があります。これらは一定の非課税枠がある一方で、相続税の課税対象として扱われるため、生前贈与によって相続財産を減らしたつもりでも、保険金や退職金の受取額次第では全体の課税価格が大きくなることがあります。

さらに、保険料負担者と契約者、受取人の関係によっては、相続税ではなく贈与税や所得税の問題が生じることもあります。生前贈与だけを切り離して考えるのではなく、保険設計、役員退職慰労金、株式承継、納税資金対策まで一体で見ることが大切です。相続税は総額で判断されるため、一部だけの対策ではバランスを欠きやすくなります。

相続人以外への贈与でも影響が及ぶ場合がある

生前贈与の持ち戻しは、基本的に相続や遺贈で財産を取得した者への贈与が中心になります。そのため、誰に贈与したかによって相続税への反映のされ方が変わる点にも注意が必要です。たとえば、法定相続人ではない親族や孫への贈与であっても、その人が遺言により財産を取得する場合には、過去の贈与が相続税計算に関わってくることがあります。

経営者家庭では、後継候補の子だけでなく、事業に関わる親族へ資金援助や株式移転を行うことがあります。ところが、後になって遺言や株式承継の設計が変わると、当初は相続税と切り離して考えていた贈与が、最終的には相続税の課税関係に影響することがあります。贈与時点だけで完結させず、将来の承継シナリオまで見据えた整理が欠かせません。

事業承継では税負担よりも資金繰りへの影響を重く見るべき場面がある

生前贈与が相続税の対象になるかどうかは重要ですが、経営者にとって本当に重いのは、税額そのものより納税資金の準備かもしれません。相続税は現金での納付が原則であり、自社株や不動産の比率が高いと、相続人が納税資金を用意するために借入や資産売却を検討せざるを得ないことがあります。

このとき、生前贈与を進めていたとしても、それが持ち戻し対象となれば税負担が想定より下がらず、資金調達計画にもズレが生じます。さらに、株式が分散していると金融機関から見た経営の安定性にも影響しうるため、単なる税務テクニックとして贈与を考えるのは危険です。誰に、いつ、どの資産を移し、その結果として議決権、配当、担保余力、納税資金がどう変わるのかまで確認しておきたいところです。

経営目線での確認項目

  • 相続税の試算だけでなく納税資金の原資を確保できるか
  • 自社株の移転で経営権が不安定にならないか
  • 個人保証や担保提供との関係に問題がないか
  • 贈与後の資産管理を後継者が担えるか

最新制度を前提に早めの棚卸しを進めることが重要

生前贈与をめぐる税制は、近年とくに相続開始前贈与の加算や相続時精算課税の見直しによって、考え方が大きく変わっています。以前に作った対策プランが今の制度に合っているとは限りません。とくに経営者は、会社の成長、株価変動、借入状況、家族構成の変化によって最適な承継方法が変わりやすいため、定期的な見直しが欠かせません。

なお、相続税法や関連する税制は改正が入ることがあるため、実行前にはe-Gov掲載法令や国税庁の最新公表資料を確認し、税理士などの専門家と具体的な数字で検討することが望まれます。制度の名称だけ知っていても、適用要件や経過措置を誤解すると、後から修正が難しくなることがあります。

まとめ

生前贈与が相続税の対象になるのは、主に相続開始前の一定期間に行った贈与、相続時精算課税を選んだ贈与、そして実質的に贈与が成立していないと判断される名義預金などのケースです。表面的には財産を移していても、税務上は相続財産として計算し直されることがあるため、贈与をした事実だけで安心するのは避けたいところです。

とくに会社経営者は、自社株や保険、退職金、借入、納税資金といった要素が複雑に絡み合います。そのため、生前贈与は節税の手段として単独で考えるより、事業承継と資金繰りの設計の中で位置付けることが重要です。今の制度のもとでどの贈与が相続税に反映されるのかを整理し、将来の承継計画に無理がないかを早めに点検しておくことが、結果として安定した経営承継につながります。